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喧噪漂う池袋に広がる夜に、派手な打音で自販機が重力を無視して上がっていくのを呆けながら眺める男は、屋上の冷たい風を浴びながら重力道理に落ちて行く自販機を見ていた。瞳は、死んだように黒い。
折原臨也はビルの屋上で走っていく男と追いかける男を眺めていた。細長い手足で金髪のバーテン服を着た男は凄い形相で、金が入ってるであろう鞄を握りしめる男を追いかけていた。追い掛けられている男の全ては自分が握っているという事はまだ理解されてはいないのだろう。臨也は天敵である平和島静雄を尻目に、星一つない曇った空を見上げた。
そう数分していると、右で大きな音が聞こえる。金属をぶつけた様な大きい音は直ぐ其処まで迫っているというのに、臨也は今だ星を眺めている。
「いーざーやーくーん?」
低音で自分の名前を呼ばれると、輝かんばかりの優越感に浸った表情で振り返った。先程まで吹いていた冷ややかな風が空気を呼んだかのように止んだ。
「やあシズちゃん。この場所がよく分かったねえ」
「・・・手前、俺の仕事の邪魔すんじゃねえよッ」
手元の金属の扉を握りしめて放つ強い言葉に、臨也は小首を傾げながら目を細めた。
「邪魔?俺の仕事の邪魔をしているのはシズちゃんだろ?」
そういうと手元の扉を強く握りしめ嫌な音が響き渡る。そして静雄は臨也を殴ろうと走り出した。長身の身体で機敏に動く様はライオンのように威圧を出している。静雄は拳を振り上げて臨也目掛けて振り降ろした。しかし臨也は軽々とその重い拳を避けて裏側に回ろうと足を回転させた時、屋上の柵が静雄の手によって破壊されたと同時に満を持して吹いた強い風に押され、身体はビルから離れた。
「はっ、」
吐息の様な声で目を見開きながら、数十メートル先の地面に向かうようにビルから足を滑らした。臨也の目に飛び込んできたのは静雄の焦るような上ずった顔で、臨也は嘲笑うかのように手を大きく広げた。全て一瞬の事だったが臨也は死を恐れる事はしなかった。むしろ、静雄のあの表情を見ただけで満足であった。
「臨也ッ!」
切羽詰まっている静雄の声は臨也の大きく広げた腕の手首を掴んだ。長い手足が有利だったのだろうか片手で残った柵を持ち片手で臨也を掴んで引き寄せた。反動で二人とも倒れ臨也が次に目を開けると冷や汗を流しながら自分を抱き締める、天敵の姿が合った。
「手前死ぬ気かよっ!」
そう言った静雄の迫力に少々身震いしながら、賢すぎる脳でこの場の整理をして静雄から飛び離れた。臨也はぐるぐると回転する脳の中で、冷たい風に打ちつけられた冷えた身体が火を吹くように熱い事を感じていた。抱き締められた場所が、火照るように熱い。顔も赤く染まっているだろう。臨也はその場にしゃがみ込んで、心の中で言葉をやっと吐き出した。
(これは、洒落にならない、)
スプーン一杯分の熱量
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