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臨也は昨日まで足取り軽く喜んでいたというのに、今日この日の臨也は酷く機嫌が悪かった。それもその筈クリスマスの日に限って恋人に仕事が入ったのだ。
小鳥の囀りが聞こえ気持ちの良い朝が始まり、機嫌を良くしてコーヒーを片手にソファに寛いでいたら黒い携帯が振動と共に震えだした。最初はメールだと持って無視をしたが何度も掛かってくるので仕方ないと携帯を開き、その時点で電話だと分かり急いで通話ボタンを押した。「ん?どうしたのシズちゃん。今日の会う時間は二時――――」臨也が最後まで言葉を言えず詰まらしたのは、電話越しの恋人の悲痛の叫びだった。とはいってもその恋人に何かあった訳ではない。怪我もしていなければ事故にも合っていない。その恋人が何度も電話越しに謝る理由は臨也の周りの空気と声を低くするには持って来いの、神様の悪戯の様な一言であった。『悪い、今日仕事入った』その一言は、先程までの優しく穏やかな気持ちを一変させる。「はああああああ!!!!?????」いつもは上げないであろう自分の大声は、その空間に響き「は、ちょっと待って。何で今日な訳?!」と言うと、臨也の言葉に謝り続ける恋人は逃げるように『トムさん来たから行くわ』と通話を終了させ電話を持ったままの臨也は何とも言えない怒りが湧き上がった。
そうして二時間後、やはり臨也は苛々とする気持ちを抑える訳ではなく節操無くその場をうろついていた。クリスマスイブの段階でプレゼントも用意して服装も決めたと言うのに。だからと言って今埋め合わせが出来る人物などいないし、そんなことしたら恋人に殴られる。ああここ2日間の楽しかった思い出が泡のように溶けて行く。
不機嫌最高潮の臨也の部屋に、勢い良く扉が開いた。時計の針は午後八時を指し夜はもう深けている。扉を開いた先にはぜぇぜぇと息を荒くしながら肩を揺らす、恋人の姿があり臨也は不機嫌な口調のままで言葉を発しようとした時、恋人は片手に高価そうな袋を臨也に付きだした。「え、」「遅くなって、悪ぃ」恋人――静雄は袋を渡してまだ仕事あっから行くな、と走り去っていく。臨也は呆然と立ち尽くしたが我に返り袋の中に入っていた箱を開ける。前に臨也が欲しいと洩らしていた高価な時計と、不器用な字でMerrycXmasと書かれている。臨也は自然と笑いが込み上げて「シズちゃんらしい、」と微笑んだ。窓を見ると空には白い雪が祝うように振っている。ホワイトクリスマスか、と静雄が早く帰ってくる事を祈って椅子から立ち上がった。
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