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臨新 大学生



1st

稀に見る地獄だ、と新羅は頭を抱えた。日が沈み橙の色を出す太陽の光はカーテン越しの光景さえ浮き彫りにさせる。新羅は大学の保健室で思いっきりベッドに踵を落とした。

臨也は白いベッドに腰掛けながら先程強打した腰を撫でながら、少々悲痛に嘆く様な声で恋人の名前を呼んだ。「新羅、酷い」臨也は先程から機嫌を悪くしている恋人に向かって不服そうに呟いた。新羅は今だ腕組みの姿勢を崩さす、布団の中にいそいそと入っていく臨也を蹴飛ばした。「僕さぁ、熱あるんだよね。二年生の保健室ここだけしかなくて、他のベッドは汚いしぐらぐらしてるから新品のこのベッドで寝たかったのに何で熱も出てない臨也が僕を差し置いてベッドで寝てる訳?」最後はノンブレスで言葉を吐き出すと臨也はわあ凄いとわざとらしく拍手をして見せ、新羅の長い問いに「新羅に会いたかったから?」と笑って言うと新羅は少し顔を赤くして「いいからそこどいてよ」と強く言うと、臨也は布団の中に潜り込んで勢い良く布団を開く。「おいで」臨也は目を細めながらどんどん顔を赤くしていく新羅を眺めた。新羅は恥ずかしそうに臨也と目線を合わせず、誘われた布団の中に入ろうと態勢を変えた時、臨也が思い切り新羅の腕を引っ張り後ろから抱き締めるようにベッドに転がった。「ちょっ、臨也」「いいからいいから」臨也は暴れる新羅の頭を撫でつつ、瞳を閉じて行く。先程まで暴れていた新羅だったがもうどうでもいいかと諦め、瞳を閉じた。

「何やってんだ、手前等」門田の不機嫌そうな声で臨也は目を覚ますと、赤く汗を掻いている新羅をぎょっと見つめた。「臨也、とりあえず新羅起こすから退け」門田の声に臨也は頷くと新羅からゆっくり離れ、数秒後に新羅が風邪を引いて熱がある事を思い出した。



2nd

ゴホゴホと咳が止まない新羅は額に冷えピタを張り、薬を飲もうと台所に向かう途中に、熱である自分を嘲笑うかのようにインターホンの高い音が鳴り響いた。新羅は嫌々玄関まで向かいドアノブに手を掛ける。アパートの影で隠れていた人影が、スーパー袋を持ちながら笑顔で「看病して上げる」と彼女の様な一言を突きつけた。「え、ちょ」「新羅はゆっくりしときなって。飲み物買って来たし、今昼だからご飯食べてないと思って軽いの持ってきた」臨也はぐいぐいと新羅の家に入って行き、予想外の事で困惑する新羅を尻目に台所に立つ。「え、臨也大学は?」「早退」「な、折角成績上位なのに」「いいの。新羅が苦しんでると思ったから切り上げて来たんだし」「嬉しいけど、」少々頑固な新羅の言葉に臨也は面倒くさくなったのか、無理やり新羅をベッドに押した。熱で頭痛が止まらない新羅には思わぬ衝撃でぐるぐると廻る視界に、臨也は笑みを作って「病人は大人しくしててよね」と厭らしく笑って見せた。

臨也は軽い料理――所謂サンドイッチという奴で、中にはタマゴエッグとレタスが入れられている。しかも口に一口で入るような小さいサイズにし、形からでも病人である新羅を気遣うような優しさだ。新羅は食欲が無かったので食べる気にはなれなかったが、臨也の気遣いを有り難く思いサンドイッチを一口口の中に放り込む。そして新羅は少々申し訳なさそうに臨也を見た。「・・・・タマゴエッグ、殻入ってる・・のと、塩と間違えて砂糖入れてるから甘いんだけど・・・」「・・・うん・・・」

甘いサンドイッチを食した後、新羅は布団の中に入った。「ど?大丈夫?喉渇いてないかい?」「大丈夫」新羅はベッドの横の椅子に座りながら新羅が寝息を立てるのを待つかのように、鞄から本を取り出す。新羅は一ページずつ捲られている本を呆けながら見ていると、どんどん瞼が閉じて行き布団に入ってから約三十分と言う長さで眠りに付いた。

起きると、真上に居た太陽も見えなくなる程沈んでいる。新羅が目を覚ますと臨也の姿はそこに無かった。帰っちゃったのかと残念そうに新羅は肩を落として、お礼の一つや二つ言いたかったのに、と拗ねるように口を尖らす。すると玄関から物音がして様子を覗き込んでいると、見えたのは大き目の鞄を持った臨也が靴を揃えている姿だった。

「え、君泊まるのかい」「そうだけど、悪いかい」


3rd

風邪で寝込んだ二日後、すっかり体調良くした新羅が目覚めると横に小さくも咳き込む臨也を見る。新羅はああ昨日キスしたのがまずかったかと、長い事一緒に居て病原菌にロックオンされた恋人を見て思った。

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