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青新


とあるカフェの、洋風で作られたお洒落な机に二人は互いににこにこと笑っていた。新羅は目の前に置かれたチーズケーキとコーヒーを突き青葉は紅茶に入れているスプーンを、ぐるぐるぐるぐると回している。新羅はコーヒーを一口含み、ボールペンとメモ帳を持ちだして青葉の手前に置いた。
「それで、用事って何かな?」
明らかに高校生に対してからかってとれる口調に、青葉は少し眉を動かしたがその笑顔を崩す事無く紅茶を回すスプーンを止め、そのペンでメモ帳にすらすらと用件を書いていく。書き終わると新羅のチーズケーキは半分無くなっており、未だにその手を休めるつもりは無いと取れる。青葉はペンを机に置いて滑らす様に新羅の前に置くと、新羅は食べる手を休めず、空いている手でそれを数秒見つめ机に乱暴に置いた。
「へえ、7人の治療をしてほしいんだ?こういう事は電話で言って欲しかったんだけど、まあいいよ。それで?この7人は『普通の病院で治療は出来ない』のかな」
「ええ、僕が貴方に訪ねる所で分かっているんでしょう」
「まあねぇ。君はこういう団体の面識がある、ね」
新羅は皮肉気に言うとまたメモ帳を手に取り、もうひとつの要件を見つめて小首を傾げた。
「これはどういうことかな」
「そのままですよ、貴方に僕の味方でありバックアップをしていただきたいんです」
「『危険』にかかわっているからかい?」
「さあ、それはどうでしょうね」
青葉は愉快そうにカフェの天井を眺めてから、新羅の細い指がペンを持ってメモ帳に物を書き足している様に青葉は妙な思いに囚われた。(これが帝人先輩の知り合い・・・。なかなか素が暴けない)冷静に分析しながら上下に動く睫毛を眺めていたら、新羅は輝かしいばかりの笑顔でそのメモ帳を青葉に向けた。
「・・・・これは」
「残念ながら、君に絶対的な味方にはなれないよ。僕は医者であるしそれ以前に人間だから、金に欲がないと言えば嘘になる」
「今日はエイプリルフールじゃないですよ、貴方はお金なんかに興味無いんでしょう」
「さあ、どうかな?・・・まあ、僕を知っていると言う事はセルティを知っているんだろう?」
その言葉に青葉は一瞬驚く素振りを見せ自身の頬を撫でた。新羅はその仕草を少し見て少し目を細めるともう無くなっているチーズケーキの、いらなくなったフォークを一瞬で青葉の目元に持って行き軽やかな笑顔を見せてから目を細める。
「いいかい、もし『君達』がセルティに危害を与える様だったら、僕はどんな手を使っても陥れるから。それだけは覚えておいて」
向けられ光る銀のフォークに青葉は流石にたじろいだ。貼り付けている笑顔が自分が見て来たあの帝人の笑みと酷似しているのもあるが、何よりその俊敏な動きとまるでメスを取るようにフォークを持っていることから、危害を与えた場合自分は多分解剖でもされるのだろう。なんといったってこの男は医者である。
「じゃあ契約しようか。君の一時的な味方になる代わりに、僕達には一切危害を与えない事。じゃないと7人は治療せず土にでも埋める」
「・・・・分かりました、それでいいでしょう」
その言葉を聞き新羅はフォークを皿に置き、先程から一口しか飲んでいないコーヒーを口に流し込み青葉の様子を窺っている。相変わらず笑みを張り付けているが、まだまだ高校生で仕草ばっかりは直せないらしい。新羅はそんな事を読み取りながら、前で青葉が(まるで心理カウンセラーのようだ)と思っている事に十中八九あたっている。
「そういえば、その足の動きでも直したらどうだい」
「え」
青葉は自分の足を見てみたが特におかしい様子は無い。分からないまま新羅に顔を向けると、新羅は顔を支えるように顎を両手の上に置いている。
「そんなに『縄張り』は必要ないと思うけど」
「は?」
新羅はそれだけ言うと、まるで興味を無くしたようにメニューを見始める。青葉は背筋に流れる冷や汗を感じながら机に置かれた水を喉に通した。新羅は机に置かれているメモ帳を自分のポケットにしまうと青葉を見つめた。
「じゃあもう用はいいかい?」
「はい。お時間ありがとうございました」
新羅は立ち上がると軽い会釈で帰ろうと席を立った時、青葉は新羅に声を荒げた。
「僕は貴方の味方ですから」
そう意地悪そうに言うと、新羅は足を止めて席に座っている青葉を見下ろす様に目線を下げた。


「緊張している小僧風情に冗談を口走られるとは思わなかったよ」


青葉の表情が、固まった。


ジョークは寝てから言いましょう

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