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年齢→大学三年生、高校二年生、小学四年生
家に両親が返って来たのは、高校三年生から二年後の俺が大学二年生になった夏の日であった。大学二年生の忙しい時期真っ只中で言うのも何だが兎に角忙しく、大学は遠く通勤は困難で合った為親が返ってくると同時に一人暮らしの話を持ち出した。両親はそれほど反対はしなかったが、弟妹が特に嫌がり話を持ち掛けてから約二ヶ月は浪費しただろうか。三日前にやっと弟妹が了承し、俺はどんどん部屋の持ち物を片付けて行く。最低限のものは持っていかなければならないし、家族にはこの場所を空き部屋に使ってもらおうと思っている。生活必需品はもう購入し明日にでも部屋に届くだろう。今日にでも荷造りをして明日の休日を生かし新しい住み場所を快適にしようと胸踊らせていたら、ぶすりと口に息を溜めてこちらを睨んで来る弟の姿が見える。
「臨也」
「兄さん、本当に行っちゃうんだね」
弟は顔を俯きながら然程殺風景になった俺の部屋を見渡した。臨也は黒い髪を鬱陶しそうに掻き分けながら目を細めて切なげに微笑んだ。
「たまには返って来てよね。兄さん、高校生のお金の少なさ馬鹿にしちゃいけないよ。電車を四つ跨いでまで行けるお金無いし」
「いや流石にお前バイトしてるからあるだろ。・・・・分かった休みが空いたら戻ってくるわ。頻繁は無理だけどよ」
「ゲーム買っちゃったんだよねぇ。・・・ん、体壊さないようにね」
「お前なあ・・・・おー」
そんな言葉を交わしながら臨也は去って行き、臨也と擦れ違うように千景が部屋を覗く。段ボール箱に詰められていく衣服や物を見ながらおーと感嘆の息を吐いた。
「兄ちゃんー。兄ちゃんの部屋なんになると思う?」
「お前らどっちかの部屋」
「だよなー。俺もそう思う。高校生にもなって二人で一部屋だぜぇ、ろくに彼女入れられねえし」
「千景。目え腫れてんぞ」
「えっうそ!ちゃんと洗ったのに!?」
千景は瞳を確認しながら恥ずかしそうに俺を見て幾度となく言って来た「兄ちゃんが居なくなるのは寂しい」と呟いた。俺は千景を傍においでと誘い、頭を撫でた。
「ありがとな」
「うぅ、また泣かせる気かよ」
「まあ、戻って来れない事もない距離だからよ」
「うぐぅ~、時々は返って来てよ」
「おう」
千景は満足したのか鼻息を荒くしながら部屋を出て行き、俺は本棚にある資料本を手に取り段ボール箱に詰め込んで行く。結構な太さの本が多い為すぐに一箱が埋まり次の段ボール箱を取る最中に、恥ずかしそうに顔を俯かせながらはにかむここの長女にして末っ子、杏里がいた。
「お兄ちゃん・・・」
「おう、どうした」
「あの、これ。お兄ちゃんが欲しいって言ってた本」
「お!!」
目の前には歴史の人物が大きく掲げられており俺はその本に吸い寄せられるように、杏里の傍に寄る。杏里は顔を赤くさせながら精一杯の笑顔で俺にその本を渡した。薄っすらと目は赤く腫れている。
「ありがとよ、杏里」
そう言って撫でると杏里は小さい体で俺の腰に飛び込んできた。小さい体は震え小さく嗚咽を漏らしている。俺は杏里の髪を何度か撫でると杏里は落ち着いたのか少し俺から離れ、「また帰って来てね」と継ぎ接ぎに言葉を並べ俺は勢い良く任せろ!と叫んだ。
両親と弟妹が見守る中、俺は鞄を持って住み慣れた家を飛び出す。家族は笑顔で手を振り俺も少し手を振りながら、バス停へと向かい歩き出した。
新居に付きドアノブを開けるとクラッカーを持った友人たちが、俺のびっくりする顔を見て不敵に微笑んだ。
「ドタチーン!一人暮らしおめでと~」
「いやいや、これで俺等の仲間入りっすねぇ!」
「お前ら物散らかすんじゃねえよ!」
三者三様の言葉は友人の狩沢と遊馬崎と渡草である。この三人が電車通勤だった俺に一人暮らしを進めた友人だ。俺はクラッカーの頭に付いた銀紙を払うと、息を深く吸い込み低い低音を出した。
「手前等、なんでここの鍵持ってんだ」
そういうと三人は額に汗を流し遊馬崎は横にいた渡草を押し、それと同時に狩沢も渡草を押して渡草は抵抗しながらもポケットからここの鍵を取り出して、目を泳がせながら言う。
「合い鍵作っちゃいました・・・・」
しかも三つ・・・と端の二人は鍵をポケットから出して俺を見ないように目線を逸らした。俺は溜息を吐くと仕方ないと思いながら三人にデコピンをした。祝いで来てくれたのだから怒れる筈がねえ。
「今日は許してやるが、とりあえず合い鍵は返せ」
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