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常々君は僕に愛や恋と呼べるような言葉を囁いていたね。勿論僕には愛する人がいて君もそれを知っていたというのに君は僕の耳元で愛を囁くのを止めなかった。思い人には首から上が無いけれども確かに愛は存在していたし僕も毎日が幸せで、ただ至福の毎日が過ぎて行くだけだった。彼女は僕のすぐ右隣に居て僕達は腕を組んでそれこそ馬鹿みたいに笑い合って。けれどいつの間にやら僕の右隣には君がいた。それも彼女と僕がしていた様に腕を組んで彼女は僕達を後ろから悲しそうに眺めているだけだった。君は随分えげつな事をしていたなと思い返せば色々と出て来る。僕の隣にいた彼女にどれ程の罵声を浴びせたのだろう。それでも至福に塗られていた毎日の変化に僕は気付く事はなく、小さな小さな変化がまるで当然のようになって君は延々と僕に愛の言葉を囁いた。彼女には首が無いから声も出ないし表情も分からない。だから彼女は僕達に一線引いてただ君を睨んでいた気がする。愛してるだとか好きだとかはもう聴き飽きてしまったし、僕はそれに返事はしない。頷くだけ。だって僕には愛しい彼女がいるのだから。そうやって前に君を突き放したのに、今度は色んな方法を使って僕達を騙してまた僕の右隣を取った。それまでは彼女と幸せそうに微笑んでいたのに厄介な物が来てしまったと率直に思った。彼女に口は無いから助けを呼べる筈も無く裏でどんな事をされたのかその時も分からないし今も全部は分からない。でもねある日を境に君は僕の右隣にずっといるようになったよね。ある日と言うのはもうそれはそれは快晴で、小鳥の柔らかな囀りも聞こえてくるような秋の爽やかな朝だった。その日僕は隣で眠る君を起こさないようにリビングでコーヒーを入れて、テレビを飲んでいる彼女の元へ座った。彼女に僕は寄りかかると彼女はとても驚いたような顔で、口変わりとしていたPDAを僕に向けて差し出して来てそこに書かれたのは僕を誰だと尋ねる文であり、その一言がすべてを終わらした。至福な時間も全てその時に崩壊を強いられて、彼女は僕達の家を出て行ったね。そうして僕が彼女に未練があった時君は本当に馬鹿な事をしたね。どんなのかは忘れたけれど薬を僕に盛って、僕の記憶を飛ばした。けれども残念だったね、あの薬が未完成な事もあるけど僕は記憶を取り戻したから。ああ、ちょっと苦しくなってきたな。息が出来なく潤む視界の中で最後に見えたのは、うすら笑いをしながら僕の首を絞める臨也の姿だった。そんなことを思いながら僕の死体はどうなるのだろうと右隣に座っていたセルティを思い出して瞼を閉じたけれども、耳に聞こえて来たのは一か月前と変わらない臨也の柔らかな笑い声だった。
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