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臨新


「そういえばさ」

新羅が手元でパソコンをいじりながら、横に居る静雄に問い掛けた。静雄も課題なのか図面に合わせて模型図を作っている。静雄は新羅の思いがけない言葉に作業を止めたが「おー」と相槌を打って、新羅は話を始めた。「君って、工学部だったんだ?てっきり僕達と同じ文学部か理学部かと思ったんだけど」という問いに静雄は手を止め「俺の親父、大工だから」と言った。すると新羅はきょとんとして「ふーん。親父さんとうまくやってるんだ?」「まあな」静雄の返答に少々納得がいかないのか、先程よりもキーボードを打つ手が遅くなっている。それを察知してか「お前は?」と尋ねると、新羅は少々言うのを躊躇って頭を掻いた。「僕?あー、僕の家は元々医者の家系でさ。小さい頃からメス持たされて、歳を追う毎に医者になるのが嫌になって、逆らって医学部じゃなく理学部に行ったってわけ」「大変だな、お前も。臨也は文学部だろ?」「そうだよ。アイツの饒舌が文学部入ってから酷くなったし」「門田は?」「ああ、経済学部。でもああいうのって数学も必要だから、結構理学部と一緒に講義があるんだけど」静雄はああ成るほどと頷いた。意味深な静雄の態度に新羅は小首を傾げると静雄は「そりゃあ、門田に妬くな」と言って、完成した模型を持ちながら部屋を出た。残された新羅は理解したのか顔を赤くしながら、馬鹿だろと弱弱しく呟いた。



「ドタチン、学食行こう」

その問いに門田は素直に頷いたが臨也の射抜くような瞳を見て、溜息を吐いた。「なんだ」「いーやあ。ただ次の講義は新羅を一緒だろ?羨ましいなと」「はあ?・・あー、お前文学部だもんな」「うん。カリキュラム決められてるし後は選ぶしかないんだけど、いいな俺理学部行こうかな」「んな簡単に転学出来るかよ」門田の問いに臨也は少し考えてだよねえと零した。臨也は文学部の近くの学食ではなく、通り過ぎて工学部の方の学食へ向かった。「なんでこっちなんだ?」「え?だって新羅と静雄一緒に居たでしょ。来るならここかな、て思って」そう言うと門田は頷き「確かにお前理学部向いてるかもな」と言った。臨也はまあねと笑うと「一年に戻りたーい」と大声で叫んだ。「ああ、最初は基礎から入るもんな」「そうそう。どの学部もね。文学部と理学部は基礎の先を進んでるし、工学部だって専門の内容は三年後以降だろ」門田はおばちゃんに蕎麦を頼み奥の人へ一礼して臨也に振り返った。「ドタチンってさ、なんで経済学部に入ったの?」「母親が弁護士だから」即答に臨也は感心すると門田の聞き返しを待ち「お前は?」と尋ねて来ると、限りなく満面に近い笑みで「気分」と答えた。門田はその問いに頭を抱えて手に持つ傍を机に置いた。



新羅は顔を赤くしながら模型を置いて来たであろう静雄と学食へ向かう事にした。二人は行きながら何を食べるかと議論をし工学部の学食に着いた所で新羅は目を点にさせた。手をひらひらと上げながら蕎麦と饂飩を食べる二人を指差して静雄を見上げた。「何食うか決めたか?俺カレー」「あー、僕は焼き魚定食」

えぐいも渋いも味のうち

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