学食のラーメンを涼しい顔をしながら食べる臨也と、何故か唐揚げの乗った中華丼を食べる新羅と横で自炊の弁当を食べる門田達は、他人と数メートルの距離があった。美貌を誇り成績も首位でバイセクシャルな臨也と賢い頭脳と童顔な顔でバイセクシャルな新羅と、後輩達に慕われ男気溢れるホモセクシャアルに人気な門田が揃っているものだから、三人が訪れた時の学食の空気は酷く動揺したものだった。

「新羅新羅、そこついてるよ」「え、どこ」「そこ、あー違う逆。ここ」そんな遣り取りをして臨也が手を伸ばした先には中華丼の米粒があり、臨也はその手を新羅の後頭部に移動させ引っ張り、見せびらかす様にキスをした。唇が離れる頃には顔を赤くした新羅が空いた手でがすと臨也の頭を殴り、臨也してやったりと厭らしい笑みを浮かべると今度は新羅がペットボトルで臨也の頭を叩いた。「僕こういうの嫌いなんだけど」「うん知ってる」バカップル達が横で甘い雰囲気を出しているというのに、ただただ死んだ目で自炊した弁当を食べる門田に周りは感心した。門田は半呆れながら冷たい白米を口に運ぶ動作を繰り返している。「新羅、そんな可愛いこと言わないでよ困るだろ」「ばっ、煩い！」

門田は学食でバカップルの会話を嫌と言うまで聞いた次の日、靴箱には応援手紙が多数寄せられたという。



門田はまた三人で学食へ足を運んで居た時、自分達と同じように他人数メートル距離が離れている男を見た。勿論意図的にではないが自分達がいつも座る場所にその男が座っていたから、気にならない方が可笑しい。少々独占欲に強い横の臨也は不機嫌そうにその男に寄って行く。「君さあどいてくんない？ここいつも俺達が座ってる場所なんだよねぇ」「ああ？」どこからどう見ても不良の金髪の顔の整った男が臨也の理不尽な物言いに、青筋を立てた。「んで手前にんな事言われなきゃなんねんだよ。ここは学食だろうが」「だから？でも俺達はいつもここに座ってたの。後、君が座っているその席は俺の大事な大事な恋人の席なんだよだから今すぐどいてくれるかな？」と臨也も負けじと青筋を立てる。その様子に二人は溜息を吐いて一足先に門田が二人の仲裁役を買って出た。「おい手前等。いい加減にしろ、こんな所で喧嘩したら迷惑だろ外行ってやれ」門田のその一言に二人は喉まで出かけた言葉を呑みこんで互いに睨み合った。「すまん、こいつの事許してやってくれ」「はあ？なんでこいつが先に―――」「俺がよく叱っとっから、これで止めてくれ。・・・名前聞いていいか？」「・・・平和島静雄」「変な名前だねぇ」「おい手前も人の事言えねえぞ」「僕もね」｢分かってんなら口出しすんな！・・俺は門田京平。んで折原臨也と岸谷新羅だ」「・・・・」「平和島「静雄でいい」・・・静雄。まあそのここまでつーことで、饂飩伸びるぞ」「えっあ！」汁を吸いこみ伸びきった饂飩をみて静雄は脱力し、臨也を睨んだ。ここまででお互いの印象は最悪と言う二文字が似合った。

廊下の片隅で臨也が新羅の腰を抱きながら歩いて行く様を、渡り廊下から見ていた静雄は小首を傾げた。最近の奴ってスキンシップが凄ぇんだなと思いながら眺めていると、公然の前でしかも綺麗に渡り廊下の最後尾の所で熱烈なキスをしている二人を見て、静雄は硬直して自分の目を疑った。そして、「うげ、ホモかよ」という言葉で横にいた臨也が静雄を睨んだ。「・・・君さあ、何差別？」「ああ？してねえよ」「してたでしょ。嫌だなあ傷つくなあ」「・・・るせ、気持ち悪ぃだろ」火花を散らしながら睨みあう二人を見る新羅は、偶然歩いて来た門田を手招きして二人を指差した。門田は盛大に溜息を吐き新羅に問い掛ける。「んだあれ」「や、僕達がキスしてるとこ静雄君が見ちゃってねぇ。あれが普通の反応だと思うんだけど臨也が怒っちゃって」「はあ。止めに入るわ」「頑張れ京平！」「るせえ」門田はまた二人の中へ歩き出し「通行の邪魔になるからグラウンド行ってやれ！」という一言で場は沈静され、一部始終見ていた新羅は「いやそれも違うんだけど・・・あー、もう何でもいいや」と零した。

「臨也！」「どうしたの新羅」「どうしたもこうしたもない！なんで君は僕の家泊まりに来たらパンツ盗むの！？」「や、下着だよ男のロマンだよ？取るしかないだろ」「返答になってない！」クラスメイトは泊まる仲なのかと小声で話しながらトラブルメーカーたちは一気に騒ぎだした。二人は同じクラスだが取る教科が違いまともに顔を見合せないのだが、今日は重なったのか一緒に講座を受けるらしく、鼻息荒く教室の扉を開けて臨也の傍に向かい大声を荒げる二人に教師は頭を抱えた。二個上の列には出会いから仲良くなった門田と静雄が二人の様子を見ている。

「いつもあんなのなのか？」「大体」「苦労してんだな」「言うな悲しくなるから」



静雄との電撃的な出会いを果たした一ヶ月後、学食では臨也はチキンカツを頬張り新羅は麻婆豆腐丼を食べ、門田は自炊の弁当を食べ焼肉カレー大盛りを食べる四人が目撃された。