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臨也は椅子に凭れながらゆっくりと瞳を閉じた。目の縁には薄っすらと隈が存在しており、机に求められた多くの書類を見ると嫌でも徹夜明けという事が伝わってくる。臨也は重たい目を開けると、仕事が終わったのか引き戸に入れられた携帯を取り出し一つのアドレスで手を止め、携帯を耳に当てた。携帯の音源からは電話を繋げている音が聞こえ臨也は電話を繋がるのを待つ。しかし何時まで経っても相手が電話に出なく、電波が悪いのが電源が切れているのか分からず臨也は携帯を閉じた。馬鹿だ、と小さく臨也は眉を下げて繋がらない携帯を握りしめる。そこには空虚だけが存在し臨也は吸い込まれるように眠りへと落ちて行った。
臨也がぐっすり寝ているといつもマナーモードにしている携帯が震えだし、臨也は急激に目覚めを感じ急いで携帯を開いた。電話の主は先程電話を掛けた人物であり臨也が電話を掛けてから一時間は経過している。臨也は通話ボタンを押し不機嫌を装いながら「遅かったねえ」と当たり前のように呟いた。電話の主はすまなそうに二三回謝り先程の用件はなんだったのかと問い掛けると、臨也は少々沈黙し「用が無いといけないの」と呟いた。電話越しなので少しの呟きは相手に公にされ、電話の主は呆れながらなんだそれと笑いを含んだ。臨也は今会えない?と言うと電話の主は少しの間沈黙して、近くに居る人に了承を経て結論を出した。臨也はじゃあ事務所で待ってるからと一方的に伝えると、通話を終了させる。臨也の瞳は安堵を求めるように天井を仰ぎ、臨也はまた瞳を閉じゆっくりと寝息を掻き始めた。
「おい、起きろ」
臨也を揺らす声の主である静雄は溜息を吐くと、コンビニ買って来た弁当を机に置いて臨也を見た。臨也の座高よりも数センチ高い椅子に凭れて寝ている臨也を見て顔を緩ますと、静雄はソファに腰掛ける。もう少しだけ寝かせてやろうと不器用なりの気遣いを施し、机に束ねられた多くの書類を手に取った。難しい言葉の羅列は静雄では理解できないような事が書かれており、静雄は書類の束を机に無造作に置くと隅にあるコーヒーポットに近寄り流れ込むコーヒーをマジマジと眺め、マグカップに注がれたミルクも砂糖も入っていないコーヒーを一口含み苦、と呟いた。そのまま静雄はそれをソファへ持って行きテレビの電源ボタンを押した。電源が点いたと思えば音量を最大限小さくし放送されているバラエティ番組を見ながら、臨也を起こすタイミングを考えていた。
臨也が目を覚ますと、夕方から夜へと変わっていた。眠たい目を擦りながら臨也は椅子から立ちコーヒーポッドへと足を運ぶ最中で、ふと先程自分が静雄を呼んだことを思い出し辺りを見渡した。けれども辺りには自分しか人間が居なく臨也は寂しそうに瞬きをする。そして、用を達したのかズボンのチャックを上げながら静雄は臨也と目が合い、驚いたように大きく見開く。「起きたのかよ」「・・・うん。おはようシズちゃん」「ん。にしても手前、よく寝てたな」なんて下らない会話を繰り返すと、静雄は手を洗いに洗面器の方に向かった。臨也もコーヒーポッドに向かうとマグカップを二個取り出しコーヒーを注ぐ。手洗いを終えたのか静雄は臨也を見ると「あ、ここにマグカップあんぜ」と遅い連絡をすると、少し眉を顰めて「もうちょっとそういう事は早く言ってくれないかなァ?」と挑発をしながら語尾に「淹れちゃったし、飲んでよ」そう付け足した。静雄も頷くと一足早くソファに座り臨也が横に座るのを待つように、ソファの端に体を寄せている。臨也もそれが当たり前のように机にマグカップを置くと静雄の横に座り肩に凭れかかった。静雄はテレビを付けると、ちょうど映画のキスシーンなのだろうか男女がキスを繰り返している。それを見てちらと臨也を横目で眺めると、罰が悪そうに眉を顰める臨也に「俺等、こんなの公然の前で出来ねえもんな」と自嘲した。臨也もそうだね、と簡単な相槌を打つ。ただ、テレビ越しの男女の恋愛が臨也の目には美しいモノに見えていた。男同士と言う関係は不毛で其れだけで世間の笑い物にされる。世界に公平等微塵として存在しない。「これの真似、しようか」「・・・ああ」二人はテレビに映る先程の男女のようにキスを交わした。キスをし終わり唇を放すとまた態勢を変え静雄の肩に凭れかかる。
数分そうしていると、今度は静雄の寝息が聞こえ臨也は顔をあげてふふと笑いを含んだように頬笑む。静雄の頬をぎゅっと強く抓りあげると飛び起きた静雄に、臨也は「今からご飯食べに行くから寝ないでよね」と悪戯を思い浮かんだ子供のように唇を吊り上げた。
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