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「大丈夫かい、静雄」そう言った新羅の目に見えたのは顔を真っ青にさせている静雄の姿だった。静雄は昼休み前に早弁をしようと思い鞄を開けたが無くなっており、購買に行こうとした所チョコレートを貰っていないであろう男子に止められ、結局残っていたのは女子達に貰ったチョコレートだったのだが。「言ったでしょ、手作りチョコは止めときなって」「うう・・・」新羅が言うのは、昨年臨也と新羅に溶かしただけの手作りチョコレートを渡された中にに、薬を盛ったチョコが多く合った事だった。媚薬と睡眠薬が基本だが悪質なチョコには下剤薬など、少々度が過ぎた物が送られてくる。前回臨也は睡眠薬を体験し頭を抱えながら「惚れ薬とかこの世界に無くて本当によかった」と言いながら自分に凭れかかるように眠ったので、門田や静雄にもそれを伝えたが今はこの有様だ。「うぐうう」「馬鹿たねえ、下剤薬なんて。女を装った男の仕業でしょ」「・・・・っうぐぅ」新羅はその状態じゃ話せないかと肩を竦めて静雄のクラスから離れた。
新羅が廊下に差し掛かった時、ちらりと見えたのは顔の可愛い「男」の子が門田に顔を赤くしながらチョコレートを渡している様子だった。門田は優しくチョコレートだけ受け取りながら引き攣った笑みをしてこちらに向くと、新羅と目が合ってバツが悪そうな顔をしている。「やあ、男からもモテモテだねえ」「臨也と新羅のお前らがいるせいで俺もホモだと勘違いされんだよ」「わあお気の毒にい」「てめえ・・・・」
新羅の教室は窓側の方に行くと裏庭の方を覗ける、言わばキャンパスの裏にある教室であった。丁度今は昼を過ぎている。いつもなら四人で食事をしている頃だが今日はバレンタインデーもあり、顔立ちが整っている四人はこの日バラバラになるしかない。臨也は去年段ボール一つじゃ足りず四箱分のチョコを貰い、今日も貰うのだろう。1年分のチョコレートを貰うのだから僕のなんていらないだろ、鞄の奥にあるチョコレートを思い出して机に項垂れると、裏庭の方に見知った人影があった。欠伸をしながら見ているとネクタイの色が新入生の色なので、(ああ僕との関係を知らないんだ)と思った。少し心に影が出来ている事も分からない程馬鹿では無い。だからと言ってどうにも出来ず、可愛らしい女の子からチョコレートを受け取った臨也を無性に殴りたくなった。
「ゴディバ、ピエール・マルコリーニ、ゴディバ、ゴディバ、ジャン=ポール・エヴァン、ゴディバ」「ゴディバ多いね」「まあね。ロイズ、ピエール・マルコリーニ、ゴディバ」「・・・・・」新羅は本命も入っているであろうチョコレートを乱雑に扱う臨也を見ながら、口を尖らせていた。「ゴディバ・・・、新羅のくれたヴィタール」「・・・え!」「鞄の中に入っていたから貰っちゃった♪」「貰っちゃった♪じゃないよ、え、どうして」「これが欲しいが為に大学に行ってたんだから」「皆見たいに高級じゃないよ」「そんなの気にしないよ」「味に合うか分からないし」「俺がホワイトチョコ好きなのは新羅しか分からないでしょ」新羅は一層顔を赤くして臨也は陽気にチョコレートの箱を開けて口へ放り込んだ。「そうは言っても、僕のは食べてくれないんだ」「・・・逆、勿体無いから食べないの」「嘘、」「嘘じゃないよ」臨也は一口分のチョコレート口に含み、そのまま新羅にキスをしようと後頭部を掴んだ。「待って、臨也」「待たない」「ほんと待って、待って、」「駄目」ふふふと笑うと臨也はそのまま新羅を引き寄せたが、「それ、手作りチョコだからっっ」と言うと、臨也は固まって顔を青くさせた。確かに包装されて痛いのはロイズの袋の筈だ。そう考えが浮かんだ時臨也はまるで子供のように瞼を閉じて、眠ってしまった。
「・・・おやすみ、臨也。ハッピーバレンタインデー」
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