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太陽が差し込む朝、静雄は眠たい目を擦りながらゆっくりと身支度をしていた。静雄は口に歯ブラシを放り込んでニュースを見る為にテレビを付ける。同じような事が流れるニュースを呆けながら見て、シャツに袖を通してズボンを履いた。弟から沢山の服を貰ったがまだ五着程しか着ていない。何を隠そう勿体ないのだ。歯を磨くのを終えてお茶を飲み、少しの欠伸をして玄関へ向かった。靴を履き替え身嗜みを整えてからドアノブを開ける。家から数歩出ると、季節は春から夏に変わるのだと風が告げていた。
それから仕事でトムと落ち合い二件の取り締まりを終えた所で、朝から何も食べていない胃が唸りをあげて静雄は少し恥ずかしそうに頭を掻きながら、トムさんお昼饂飩とかどうっすかと尋ねた。トムは時計を見て返事を待つ犬の様な目で見て来る静雄に眉を下げながら、そうすっかと楽天家の様に歯を見せて笑った。
静雄のお薦めらしい立ち饂飩の店に行き、きつねうどんと静雄が言うとトムが少し焦りながら俺は肉うどんなと店員に言うと、これまた素敵な柔らかい笑顔で分かりましたと頭を下げたが、静雄を知っているらしくメニューを持った手が震えている。それを知っている静雄は少し寂しそうにトムを見たが、それを水で流すかのように注がれた冷たい水を呑みこんだ。
食後静雄は取り立てを数件処理し、真上だった太陽は沈みかけている。相変わらずこの街は喧騒に溢れ昼夜関係無く賑わっている。静雄は欠伸をしながら朱色掛かった空を眺めて夜の始まりを感じていた。そろそろカラーギャングが動く時間帯である。静雄は面倒くさそうに首を鳴らして煙草を手に持って、物寂しい口に加えた。すうと煙が灰を通って行く感覚に静雄はああ、今日一日の仕事が終わったと痛感を覚えた。――――その時、全身を黒で染めた男が愉快そうに此方を眺めていることに気付いて、静雄は煙草を握り締め横にあった標識を手に取った。
ビルの屋上に着くと形が変わってしまった標識を強く握りしめ、夜風に当たっている男を睨みつける。
「池袋には二度と来るなって言ったよなァ?臨也よぉ」
そう言うと男―――臨也は愉快しきった満悦の表情でこちらに向き、胡散臭い笑顔を張り付けたまま静雄を射止めるように見つめる。
「早いねぇ、十秒も経ってないんじゃないの」
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