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新羅、と母を求めるような声を醸し出すのは黒髪の青年であった。互いに黒髪であるが短く吊り目な男―――臨也は何度も新羅の名前を呟いた。その様子に当の本人は首を傾げながら、マグカップに注がれたコーヒーを音を立てて飲む。
「新羅、」
「・・・・あー、もう。どうしたの臨也」
その返答は帰って来なかった。新羅は訳が分からないと肩を揺らす。今この場にセルティが居たらまだよかったのに、生憎セルティは運び屋の仕事で先程家を出たばかりだ。簡単に帰ってくるとは思わない。今の新羅にとって臨也と二人きりの状況は少しばかり遠慮したいのだが、置かれたお茶をちびちびと飲んでいる臨也に新羅は溜息を吐く。いつもの臨也で無い上に扱い辛くそのせいか新羅は、否二人は沈黙を保っていた。それを破ったのも元凶の臨也である。
「新羅、いつからセルティが好きなんだ?」
「いつから?そりゃあもう四歳くらいのころかな?この想いが叶ったのは二十歳になってからだけど、小さい頃から好きだったから今の状況が嬉しくて堪らないと言うか鼻血もの「も、もういい」・・・あ、そう?」
「そっか、そんなころから好きだったんだ」
「まぁね」
「威張る所でも無いけど」
臨也はそう言うとまた沈黙を作りだす。自分から聞いた問いとは言え、やはり返答は相変わらずで臨也が余計に傷つく結果となっただけなのだが。臨也は新羅が好きだ。想いに気付いたのは中学校からであるが、その時既に自分の恋路は失恋へと向かって行ってたんだと思うと臨也からは自嘲気味な笑みが漏れた。
「臨也?どうしたの、急にニヤニヤしだして。気持ち悪いよ?」
「地味に酷い。その言い方地味に傷つくんだけど?」
「あはは、痛い痛い痛い!」
新羅の足を踏みつけながら、臨也は新羅の前に置かれたマグカップを手に取り自分の口元に持っていく。新羅は急なことで目をぱちくりさせながら食道を通るコーヒーを呆然と見ている。一口飲め、臨也は新羅の前にマグカップを置く。
「・・・甘い。次からもっと苦くしてよ」
そう言うと新羅はまた溜息を吐いた。
恋線離脱
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