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新セル+五歳児臨也


折原臨也という人間は朝に弱い。誰かに起こされた時など不機嫌以外の何でも無く、不貞腐れたような顔で朝食を食べるのがいつもの日常であった。今日この日も布団の気持ち良さに揺られながら、目を覚まして置き上がる。いつもより視界が狭く布団が大きいように感じたが特に気にする必要も無く、ベッドを降りようとした。その時、床に足がつかないなと思って視線を下げると子供の様なふにふにとした短い足、ちらりと横目に見えた窪みが殆どない手。臨也の体温が急激に冷め始めていた。
「な、にこれ」
何時もなら綺麗に発音できる筈が、呂律が殆ど回らなく舌足らずな声になっている。臨也小さな手足を必死に振りながら洗面器の一角にある大きな鏡に向かう。
―――――――――鏡には、小さな自分の顔や体が写っていた。
声にならない悲鳴が折原臨也の家に響き渡る。


神様、アンタ一発殴らせて下さい


臨也の目の前には腐れ縁である友人と、その恋人である人間紛いの妖精と呼べる存在がソファに座っている。自分にこんな事をする奴は腐れ縁の変態闇医者しか居ないのだ。だからこそ臨也は小さな手足で此処まで来た。あの後波江を呼び出し子供服を用意し、新宿から池袋のマンションまで車で送ってもらう。流石に五歳児の臨也が電車に乗るとなると流石に危険だと判断した波江が、溜息を吐きながら渋々了承した。
「で?今日はどうしたんだい?随分可愛いらしい姿になって」
「うるさい。こんな体にしたのお前だろ。なに考えてんのかしらないけど、早くもとの体にもどして」
笑う新羅を横目に臨也はひらがなのような喋り方をするしかなかった。それを見てまた笑いだす新羅に、臨也は小さいながらも舌を打つ。その意味合いには激しい嫌悪が込められていたが、新羅はそんな事に聞く耳持たないかのように笑顔で答えた。
「残念、それ僕じゃないよ。昨日君に会って無いしどうやって薬を盛り込むわけ?」
「は?なに言ってんのさ」
「だから、俺じゃないんだってば。君をそんな体にした覚えはまったくないよ。昨日はセルティと一緒に映画見てたしね。・・・・まぁ妖精やら罪歌が居るくらいだし、体が縮むのも無理無いんじゃない?受け止めなよ」
「ちょっとまって。君じゃないとしたら誰がこんなことをするの」
「さあ知らないよ。まぁ私は神様を信じないけど、まあ十中八九神様なんじゃない?」
新羅は愉快そうに言葉を弾ませながら、臨也を見た。臨也は徐々に焦りと不安が生まれているように顔を青ざめさせながら、新羅に救いを求める。セルティは気の毒そうにソファに凭れかかり二人の様子を窺いながら、その様子に小さくなった体の為涙腺が緩く、今にも泣きだしてしまいそうな臨也は大きな目を潤ませながら新羅を見つめる。新羅ははぁと溜息を吐き、臨也の前に日本の指を突き出した。
「二年。君が元の体に戻る為に作る薬は、二年以上かかるよ。それでもいいのかい」
臨也はその言葉を聞いて小さく二年、と呟く。この体で居る時間はそんなに長いのかと突き落とされたような気分になったが、他に方法がないならこれが最善の策。臨也は新羅の問いに静かに首を縦に振った。―――――肯定。
「分かった、じゃあ取りあえず五歳児の生活の不便から直していかないと」
新羅がそういうと、新羅の腕をつんつんと突きセルティはPDAを取り出し打ち込み始める。新羅は頭の上にはてなマークを飛ばしながら静かに『言葉』を待った。
『なら、臨也をここに住ませたどうだ?』
「えっ、セルティ!?」
『流石に新宿に居たら危険じゃないか?子供の姿だし』
「ちょ、ちょっと待ってよセルティ。君はそれでいいのかい!?」
『別に構わない。それに、私も新羅との子供出来たみたいで・・・』
「!! セ、セルティ!君がそう言うなら僕は臨也を住ませるよ!うんうん、二年くらいだけど臨也を俺たちの子供だと思えば可愛く思えてきたし!いいよね臨也?」
「ごめんちょっとついて行けない。なんで俺が君たちとすごすことになってんの!?しかもなんかすごい失礼なこと言ってる気がするんだけど?!」
「え?でもその方が楽じゃない?その姿で街中歩くことは出来ないけど私たちの傍に居れば親子としてみられるんだよ?良い話じゃない?」
「うっ、いやでも」
『それにその姿じゃいつもやってた情報屋の仕事も出来ないだろう?でも私たちはお前を養う事は出来るんだぞ』
新羅とセルティの言葉に臨也は口を噤みながら、小さな手をぎゅっと握りしめて目を潤ませながら言った。

 








「よろしく、お願いします・・・」

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