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ギン受け

映画は、大成功を飾った。



と、言えば満更素敵な事であったが、確かに邦画には変わりなかったし、監督がポケットマネーを出してまで頑張ってくれた作品であるし素晴らしいと自負していたが、映画は確かにヒットを飛ばし話題を呼んだ。むしろ、それだけだったら綺麗な終わり方をしていた。吉良は周りの目の執拗に憐れむ視線を感じて、深く溜息を吐く。この映画がヒットを呼び、女性が然程だが人気も徐々に上がっている事は耳に入っている。同性愛や
近親相姦と言うタブーを大勢の人が、面白いと感じたらしい。問題は。吉良はコーヒーを流し込みながら、頭を掻いて眉を顰める。問題は、世間一般に、自分と言う存在が、歪曲を経て自覚されたと言う事だった。
元々、吉良は、駆け出しのモデルである。モデルの職業に成って僅か半年で、雑誌の表紙飾るまでになった売れっ子になった。類を見ない程に勢い良く売れ出したのは、今回が初めでは無い。吉良とこの度共演した市丸ギンは、モデルに成る前から高い人気があり、吉良と同じような経路で、雑誌の表紙を飾った。なので、世間から見ても、二代目市丸ギン、ポスト市丸ギン、という呼ばれをして来た吉良として、映画を二人で仕上げ自分も漸く市丸と同じ位置に並べると、嬉しい誤算を夢見ながら役作りに取り組んで来た。しかし。
吉良は、今日何度目かの溜息を吐く。しかし、今の自分の認識のされ方は、誤解を招く様なものである。確かにこの映画をするに当たって、大先輩の市丸から指名が来た時は小躍りしてしまったし、キスシーンの後市丸を少しそんな目で見てしまったが、自分は断じて。
ええ、断じてホモなどではない!



そう知り合いでモデル同期である阿散井恋次に、アルコール度数の高い酒を口に入れながら、これまでの経緯と事情、自分の心中を言葉にした。呂律なんぞ回ってはいないが、毒さえ吐ければ誰でもいい。
「お前なぁ、注目浴びてんだからそんなの気にすんなよ。どんな形であれ、事務所の大先輩と共演出来るんだぜ?いいなぁ、俺も白哉さんとしてぇー」
「阿散井くん、君にはわからないよ・・・」
ふりふりと首を横に振ると、吉良は大先輩との共演に夢を馳せる阿散井に眉を下げながら、ずぃ、とコップの中に入っている酒を喉に流し込む。

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