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シズイザ


折原臨也は、数年と三ヶ月と二十六日前に相手が自分を捉える瞳の意味を知っていた。知っていると言えど相手が近づいて来ないのだから放置をしていても仕様がない。臨也は呆気に取られる波江を尻目に、ミルクの入っていないコーヒーに次々と角砂糖を放り込んでいき、今入れたので七個目に突入した。一口口に含むと甘ったるい砂糖の味しかしないコーヒーを勢いよくごくごくと飲み込み、飲み干す時にはもう口の中は砂糖の塊が無数と存在していた。そうして、臨也は苛々する感情を甘過ぎるコーヒーで抑え込んだのだ。

平和島静雄は一昨日の夕刻、臨也の姿を見て小首を傾げた。あんなに華奢で細い体や顔は少し肉が付いていい感じに丸くなっている。前が痩せ過ぎだったのかもしれないが静雄は少しの違和感を感じていた。それは簡単に真実となって静雄に襲い掛かる。――――今日の真昼臨也の背を眺めていると、臨也が行き成り地に伏す様に倒れ込んだ。母音さえも発することが出来ずにただ目を見開いて瞬きする時には臨也は気を失っていた。




静雄が臨也に対する気持ちを発覚したのは、実に青二才の高校生の時からだ。お互い正反対の対極のお陰なのか磁石のように惹かれ、一定の距離からは近づかなくなった。自分がこれ以上に進展を望まなくなり臨也も臨也で静雄とは目も合わせようとはせず、そのままずるずると大人になって今に至る。病院で頭を抱えながら昔の出来事と最近の出来事を照らし合わせる、言わば対照実験を頭の中で行っていた。多分臨也は静雄が何を思い自分を見ていたのか気付いた上で行動しなかったのだろう。静雄は目を覚まさない臨也を見下ろしながら、トイレへと足を運ぶ。用を足しに来た訳ではないので、気分転換に手を洗おうと大きく張られた鏡に映る自分を見つめる。その鏡に映る自分の目はただ、臨也に対し劣情を隠せていない獣の瞳であったので、臨也が目覚めたらまず告白しようと思い水を顔に浴びせかける。


医師は心配する必要はありません、と最初に付け加え笑顔を見せた。静雄は渡された紙に目を通すと、後ろから波江が覗きこんで溜息を吐いた。顔には四つ角が存在し臨也が起きると、まずこの女は叱咤するのだろうと思ったが静雄は紙に目を戻し、ある一点を見つめて静雄の劣情した瞳はぱちくりと瞬きを数回繰り返す。心配はいらないのだが、余りに数値が高いので静雄小さく呟く。






「糖尿病かよ・・・・」
折原臨也は列記とした、血液に存在する糖の濃度が病的に高いあれだった。

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