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ヒィ、と引き攣った声を出す政宗を、幸村は目を伏せながら見詰める。政宗殿、と言う言葉を言うだけで喉がからからになった。政宗は顔を覆う様に腕を顔に貼り付け、渋めの紺の着物が白い肌を際立たせた。
「政宗殿、朝餉の準備が整っております」
「Shut up、何処かに行け、ひ、近寄るなッ」
怯えて体を震わせながら、より奥に下がろうと忙しなく手を動かす。そこに好敵手だった面影など無い。幸村はより眉を下げて、申し訳御座いませぬ、と頭を下げた。
「後で、女中を向かわせます故、今日こそは箸をお付け下さい」
一礼して襖を閉めると、影が安堵を付いたのを見て、幸村は歯を食い縛った。門廊を歩いていると、後ろに気配が生まれたので、直ぐ様後方を見る。佐助、呟けば下げていた頭を上げた。
「あの男は、まだ?」
「…ああ。俺だけ避けているようだ」
がっくりと肩を落とした幸村を宥めるように、柔らかく微笑んだ佐助は、また頭を下げ、失礼、と言いながら闇に埋もれる。幸村は気を付けてな、と天井に目を細めると、返事をするようにそこから気配が消えて、幸村は前を向いた。
佐助は、政宗の部屋の襖を開け、盛大な溜息を吐く。いい加減にしろ、と小さく口を動かした。
「竜、お前はいつまで旦那を気にかけさせる。刀を振るった時期に比べて、旦那はアンタが居る所為で身動きが出来なくなっている。お人好しに寄生して楽しいかい。伊達軍に死んだと朗報されて、帰る場所もない」
佐助は手にクナイを持ちながら見下した。薄暗い部屋ではより雰囲気を醸し出している。
「右目も旦那が殺した今、アンタは価値すらない。旦那の槍で体に穴を開けられた時、そのまま死ねば良かったんだ。それとも、いっそこの場で殺してやろうか」
低い声は、滲み出る殺気を溢れさせた。ピリピリと痛むような視線の中、政宗は、口に弧を描いた。
「そうだな、今すぐ殺せよ。それで楽になれるなら、死んでもいい」
佐助はその言葉に、持っていたクナイを畳に投げた。嘲笑したまま佐助は踵を返した。
「…殺してなんかあげないよ。アンタは死ぬまで、ここで鳥みたいに閉じ込められてたらいい。竜の血を浴びたら、俺だって毒で死ぬね、きっと。まあでも、舌を噛み切るのも手だと思うけど。って、聞いてないし」
政宗の体が力無く倒れる。口から滲み出る血に、佐助は瞠目して笑う。
「駄目だよ、アンタはどんな事をしても死ぬ事は出来ない」
だって、もう死んだも同然でしょ。
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